2008 Fiscal Year Annual Research Report
企業業績に対する資本市場の期待の形成過程に関する実証研究
Project/Area Number |
19530421
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
加藤 千雄 Osaka University of Economics, 経営情報学部, 准教授 (90319567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 融 大阪経済大学, 経営情報学部, 教授 (50300364)
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Keywords | 企業業績 / 経営者予想 / 楽観的予想 / 市場の反応 |
Research Abstract |
経営者自身による業績予想(以下、経営者予想)が実質的に義務付けられている我が国の決算短信は、他国に類を見ないユニークな開示制度である。本研究では経営者予想の特性分析を第一の課題として実態分析を試みてきた。決算発表時に公表される期首予想は従来の認識と異なり、楽観的な方向にバイアスがかかっていた。米国を中心に自主的な経営者予想を対象に行われてきた従来の研究は、その多くが経営者の保守的な開示姿勢を示すものであり、この点が本研究結果の際立った相違点である。また実質的に予想開示が義務化されている我が国では、継続的に予想の時系列を分析対象とすることが可能である。この点に着目し、本研究では期中における予想変更の動き、また多年度における予想と実績の対比(予想誤差の計測)を行ってきた。その結果、期中の予想修正を通して経営者は予想誤差の縮小を行っていること、また過年度楽観的な予想誤差を記録(負の予想誤差を発生)した経営者は、次年度以降も概して楽観的な予想を継続することなどを明らかにした。とりわけ後者の結果は、名声といった要素による経営者への規律を想定する議論とは相いれないものである。本邦企業経営者は、管理会計的な要素を行動原理として開示を行っている可能性が示唆された。一方株価の反応の分析から、市場は経営者の予想の楽観的な性向を織り込んで価格形成がされていることも明らかとなった。一方本研究は経営者予想公表のタイミングを使い、買収防衛策が企業価値に与える影響の分析も試みた。類似研究でしばしば使われるトービンのQは制御すべき変数の欠損の可能性が常に付きまとい、イベントスタディには馴染みにくい。経営者予想情報の活用がこの点を補完する手段となりうることが期待される。
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