2009 Fiscal Year Annual Research Report
市民社会のなかのハンセン病問題-家族・社会復帰者・再入所者のライフストーリー
Project/Area Number |
19530429
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
福岡 安則 Saitama University, 教養学部, 教授 (80149244)
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Keywords | ハンセン病 / 差別 / トラウマ / 聞き取り / ライフストーリー |
Research Abstract |
わが国のハンセン病問題は,患者さんたちに「療養所」への収容を強いた「強制隔離絶滅政策」として特徴づけられる。このことは,同時に,ハンセン病の治療をも「療養所」内に隔離したことを意味し,かつは,強制収容にともなって社会的な偏見と恐怖心をあおったため,市民社会のなかに,ハンセン病罹患者の「居場所」をなくしたこと,家族もまた社会的忌避・迫害の対象とされたことを意味する。ゆえに,ハンセン病問題の社会学的調査は,「療養所内のハンセン病問題」のみならず「市民社会のなかのハンセン病問題」の調査研究をもって,はじめて全体像の解明に迫りうる。 栗生楽泉園入園者自治会の要請により,2008年夏に『栗生楽泉園入所者証言集』刊行のための編集委員会委員長に就任したわたしは,2009年度に入っても,精力的に『証言集』の編集作業を進め,8月末には,入所者・再入所者・退所者あわせて50名の病歴者の「証言」を収録した全3巻からなる『証言集』の出版を実現した。当事者のライフストーリーが,これだけの規模で集合的に資料化されることは,これが初めてであり,この出版は多くの新聞やテレビでも取り上げられた。 また,非入所者を母親にもつ1945年生まれの男性が体験した苦悩の生活史を聞き取りからまとめた。これは,わが国のハンセン病政策が,たんに《強制隔離》の力によってのみ推し進められたものではなくて,より広汎に,社会のなかからハンセン病罹患者とその家族の居場所を奪う《社会的排除》の力とあいまって展開されていたことを明らかにする業績である。
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Research Products
(5 results)