2010 Fiscal Year Annual Research Report
固有な<生>を支える市民活動と地域形成に関する実証的研究
Project/Area Number |
19530432
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 亮 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (40313788)
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Keywords | 社会学 / 災害 / ボランティア / 支援 / 聴く / 実践知 / 組織化 / 自律 |
Research Abstract |
平成22年度の研究は本研究の最終年度にあたる。引き続き神戸のボランティア活動(被災地NGO協働センター、特定非営利活動法人拓人こうべ、阪神高齢者障害者支援ネットワーク)の社会学的記録を行うために各リーダーにヒアリングを実施した(ただし、東日本大震災の発生により一部調査が実施不可能となった)。また、ボランティア活動の展開に対する理解を促進するため、対比的に運動団体(「よみがえれ!有明海」訴訟支援の会、有明海漁民市民ネット)の活動調査も併せて行った。神戸のケースも有明海のケースも、対象者(被災者、障害者、高齢者、被害漁民)をいかに支えていくかをテーマとした活動であり、対象者ニーズに即応しつつ全体としての目的達成を目指した活動を実践している。そして、状況に合わせた柔軟な組織改編を行ってきた点でも共通点を有している。 阪神高齢者障害者支援ネットワークで展開している高齢者向けのコミュニティカフェ(ふれあい喫茶)では、その主目的である参加者の交流を介した生き甲斐の創出を達成すると同時に、集った人々への見守りから個別ニーズの把握がなされている。さらに、そこに現れない人に対する自宅訪問を実施することで安否確認がなされ、全体として地域の高齢者把握が行われている。被災地NGO協働センターでは被災現場の最前線での支援活動を展開しているが、中越地震に引き続いて東日本大震災においても足湯プロジェクトを実施し、そこでの被災者の「つぶやき」を〈聴く〉ことで個別のニーズ把握に繋げている。状況に即した組織改編の基礎となるのは揺るがない理念と同時に徹底した個別ニーズの把握であり、組織はこのニーズ充足の手段となっている。以上のように、組織編成のあり方の根源には対象者の〈生〉に向き合おうとする理念とそこからくる徹底したニーズ把握の姿勢が存在することが明らかとなった。
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