2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530442
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
材木 和雄 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (70215929)
|
Keywords | チェトニク / パルチザン / 第二次世界大戦 / ユーゴスラヴィア |
Research Abstract |
本年度は第二次世界大戦中のクロアチアにおける占領勢力に対する抵抗運動の発生過程をたどり、運動の実戦部隊となった蜂起集団の性質を再検討した。 クロアチアにおける集団蜂起は共産主義者が準備し、その指揮の下に開始された。蜂起に参加した住民の大半はセルビア人の農民であった。だが当初、蜂起集団は全体として明確な目的や方向性をもたず、対立する志向性をもった諸個人が混在する状態であった。蜂起の参加者はウスタシャを攻撃し、これを彼らの居住地域から追放するという一点で結束し、共産主義者の指導を受け入れて行動を起こした。このことから近年のクロアチアの研究者は、チェトニクは最初から蜂起集団に加わり、共産主義者と共に反乱を指揮していた勢力だったと主張する。 しかし、集団蜂起の開始時点ではチェトニクは明確に組織された集団としては存在しなかった。クロアチアにおけるチェトニクは、イタリア領ダルマチアから特別の任務をもってセルビア人ショーヴィニスト集団が帰郷し、その任務に沿って一遮の行動を起こした結果として初めて組織化が始まったと考えられるからである。 ただし、前線の兵士の行動はウスタシャに対する怒りと報復の感情に支配されていた。その際、彼らはしばしばクロアチア人およびムスリム人をすべてウスタシャかその協力者と見なし、武装勢力と民間人とを区別することなく攻撃の対象とし、蛮行に及んだ。攻撃を受けたクロアチア人とムスリム人から見れば、セルビア人の蜂起集団はその指揮者が誰であるかに関係なく、残忍なテロ集団だったと考えられる。 本年度の研究からは、このような性格をもつセルビア人の蜂起がその後のユーゴスラヴィアの抵抗運動の展開にどのような影響を与え、ひいては戦後のクロアチアにおけるクロアチア人とセルビア人との関係にどのような関係を与えたのかを明らかにすることが今後の課題として浮かび上がった。
|
Research Products
(1 results)