2010 Fiscal Year Annual Research Report
過疎山村、十年の変化ー合併、少子化を経た、ある山村(大分県中津江村)の追跡調査ー
Project/Area Number |
19530458
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
山本 努 県立広島大学, 経営情報学部, 教授 (60174801)
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Keywords | 過疎 / 地域 / 人口還流 / 結婚転入 / 定住 / 高齢化 / 少子化 / 農山村 |
Research Abstract |
1, 本年度は今回科研で行った過疎地域の調査データから、特に定住経歴を取り上げて分析した。その結果、地域人口において、人口還流、婚入(結婚転入)がそれぞれ20数パーセントを占め、両者で50パーセント弱となり、過疎地域にもそれなりの流入人口があることが示された(また、両者以外の人口流入もわずかながらあった)。これに土着層(生まれてずっと住んでいる)の30数パーセントを加えると、地域人口の80数パーセントにもなる。つまり、過疎農山村地域は非常に厳しい問題をかかえながらも、地域の土着的人口持続力は今も、それなりに生きている。 2, また、人口還流や人口定住については、従来の過疎研究で殆ど蓄積がないが、今後のこの分野の課題設定について、いくらかの貢献は出来たと思う。その第一は、過疎地域といわれる地域にも、人口還流がそれなりに活発に(地域存続に意義ある程度に)存在することを、地域調査(ミクロデータ)で実証的に示したことが重要と思われる。従来、人口還流を示すには、マクロデータ(公的統計、集計データ)に依拠した研究が殆どであったが、それらとは一線を画した知見が今回調査で示されたからである。第二には、人口還流の動機分析、生活構造分析などについても、調査からの知見を示した。これも重要である。さらには、第三として、婚入人口が土着的通婚圏を維持しつつ今も存在することが示された。最後に第四として、住民の定住意欲の高さも確かめられた。 3, これらの知見から、限界集落論的な方向性とは別の過疎農山村地域・過疎農山村人口研究の可能性が示されたように思う。
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