2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530470
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山下 充 Meiji University, 経営学部, 准教授 (00318726)
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Keywords | 社会学 |
Research Abstract |
本研究の目的は,日本企業における人事部門の発展を明らかにすることで,日本型人事労務管理の形成に独特な役割を果たしてきた人事部の機能を歴史的に分析することにある。日本における民間企業の人事部門は大正期に、(1)頻発する労働争議への対策、(2)社会問題化していた劣悪な労働条件の改善、(3)社員および職工を集権的に管理する必要性から徐々に広まり、第二次世界大戦に入り、軍需関連工場に大量の動員が必要になるとより整備されたかたちで拡大していった。敗戦直後は、労働運動対策の中心的組織として、また、長期安定雇用が広まると企業内での人材配分の調整機構として大きな役割を果たしてきた。 今日の人事部門の主たる機能は、以下の3つに要約される。(1)内部労働市場の管理(内部労働市場機能)部門や事業所内での昇進・昇格などの「タテの内部労働市場」に加え,部門を越えた異動などの「ヨコの内部労働市場」を管理すること。「タテの内部労働市場」の管理がもっぱらラインの管理職に担われているのに対し,本社人事部には「ヨコの内部労働市場」を管理する「強い人事権」が与えられている。(2)労使関係における使用者代表機能(労使関係機能)企業別労働組合との協調的な関係を重視する日本的労使関係おいて本社人事部は最も中心的な役割を担う部署と位置づけられている。(3)採用や賃金・雇用制度構築における強い権限(全社的雇用管理機能)基幹従業員である正社員の採用にあたっては本社人事部が権限を有しており,実際の採用プロセスにおいても実質的な権限を行使している。 以上、日本の人事部門は歴史的に異なった経営環境に対して、独特の形で組織内外の課題を解決する部門として展開しており、これが日本型人事部の重要な構成要因となっていることが明らかとなった。
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[Journal Article]2008
Author(s)
山下充
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Journal Title
人事部(仁田道夫, 久本憲夫編著『日本的雇用システム』所収)(ナカニシヤ出版)
Pages: 309(235-268)