2010 Fiscal Year Annual Research Report
自然環境を媒介とした共同性構築過程に関する研究-人と自然の関係誌を読み解く-
Project/Area Number |
19530471
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
関 礼子 立教大学, 社会学部, 教授 (80301018)
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Keywords | 共同性 / 観光 / 自然環境行政 / 「負の記憶」 |
Research Abstract |
人と自然との関係が自然を媒介とした人と人との関係であり、自然環境は共同性を帯びるという観点から調査研究を行った。 自然の利用と保全および自然環境保全をめぐる諸制度については、地方自治体において、私有地の保全が所有者の属するコミュニティと行政との距離感覚が柔軟な自然保護の制度設計を可能にしていること、またそうした制度設計のなかで自然保護が体現されることが所有者の意識を制度目的に近いものへと変化させていくことがわかった。 公害・汚染がもたらした諸問題の伝承という点については、環境教育を含めた広い意味での観光を企図した「負の記憶」の伝承とその創造性(物語の創造性)について、人々の日常性および地域における記憶の共有に関する試みを事例に即して明らかにした。 自然環境の公共性、地域から公共性を組み立てるという視点において、住民目線の地方自治の重要性は明確であるが、それは必ずしも近代的な市民を前提とするものではない。地域の自然に密着して営々とした日常を過ごす農山漁村の心性を頭越しにするのではなく、その意図を汲み取った自然環境保護行政を組み立てていくことが重要になる。固い制度や制度理念と柔らかい制度や制度理念がせめぎあいながら、地域のシンボリックな景観や自然が未来に向けて生み出されているという「物語」を編み出していくことは、自然環境を価値づけ、序列づける自然保護の在り方を根本的に変質させる方途となる。同時に、こうした点から従来の自然保護の重要事例を再解釈するならば、そうした無意識の営みの重要性を見出すことができる。
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Research Products
(5 results)