2009 Fiscal Year Annual Research Report
インタビュー調査による世代間の財・サービスの公的移転と私的移転の関係に関する研究
Project/Area Number |
19530481
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大和 礼子 Kansai University, 社会学部, 教授 (50240049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩渕 亜希子 追手門学院大学, 社会学部, 講師 (70420429)
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Keywords | 社会学 / 世代間関係 / ジェンダー / 公的移転 / 私的移転 / 育児支援 / 介護 / 自立と依存 |
Research Abstract |
○分析枠組みの構築:文献レビューにより分析枠組みを構築した。大和は、世代関係を分析する大きな理論的枠組みと、遺産と介護の交換についての研究のレビューを行い、現在レビュー論文を執筆中である。岩渕は、個人化と、高齢者の自立/依存意識についての研究のレビューを行った。 ○データの分析:インタビューデータの分析から高齢の親世代の意識について次のことがわかった。 (1)遺産と介護の交換については、子どもと別居の場合「子が介護し、遺産は子に譲る」という意識は弱く、特に女性ではこう考えている人はほとんどいなかった。男性では一部にこの意識をもっている人がいたが(息子が1人で、父系の「跡継ぎ」の位置にある子が明確であるという人に多い)、実現は難しい場合が多かった(なぜなら娘はおらず、嫁には介護を頼りにくいから)。また戦略的交換というより、家族の絆を維持したい(性別分業、つまり介護は娘、相続は息子という原則にもとづいて)ということから発する意識であることが多かった。このことの背後には、現在日本の世代関係が「日常の援助における性別分業にもとづく双系」(夫婦家族モデルで、ケアは娘)と「系譜における父系」(直系家族モデルで、相続は息子)が融合・並存していることがあると思われる。 (2)自立/依存意識については、自分の介護と、生命についての自己決定(病名告知や延命治療)の意識について分析した。その結果、介護においても生命の自己決定においても、子どもに依存する(ゆだねる)という意識は希薄だった。しかし介護については、子どもから自立「せざるを得ないもの」として語られることが多かったのに対し、生命の自己決定については「自分で決める・自分の意志を押し通すことができる、むしろ自己決定しておくべきもの」として語られることが多かった。この違いの意味については今後さらに分析を進める予定である。 ○学会報告:上記の分析結果を、大和は関西社会学会と日本社会学会で、また岩渕は関西家族問題研究会で報告し、多くの有益なコメントや示唆を得ることができた。今後はこの結果をもとに論文を作成し、また関連論文を集めた本の出版をめざして分析をさらに精緻化していく予定である。
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Research Products
(4 results)