2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530486
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
木原 滋哉 Kure National College of Technology, 一般科目, 准教授 (20259922)
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Keywords | 社会学 / 政治学 / 社会運動 / 公共圏 / 公害 |
Research Abstract |
本研究「対抗的公共圏と社会運動ネットワーク」の具体的対象は、宇井純を中心とした「自主講座」運動である。本年度は、昨年度に引き続いて、埼玉大学に所蔵されている「宇井純公害問題資料コレクション」について調査を実施し、とりわけ宇井純が公表した論文などの文献だけではなく、宇井純自身の足跡を辿り、宇井純が調査や講演などの活動を通じて、どのようなネットワークを形成していったのか、ひとつひとつ明らかにしていく作業をおこなった。この作業は、反公害社会運動ネットワークの形成過程において、宇井純および自主講座運動の果たした役割を明らかにするものである。 また「宇井純コレクション」に所蔵されている資料で辿ることができた社会運動ネットワークの意味や機能を明らかにするためには、当事者に対する聞き取りが欠かせない。聞き取り調査については、本年度も十分に実施できたとはいいがたいので、最終年度である平成21年度における調査で補足したいと考えている。 資料や聞き取りにもとづく調査・研究と平行して、社会運動ネットワーク、対抗的公共圏など主要なキー概念の理論的研究も継続・実施した。とりわけ、ハーバーマスが批判してきたベンヤミンとアドルノの経験概念を再評価する中でハーバーマスの公共圏概念を組み替える作業をおこない、ベンヤミンやアドルノを再評価する視点を対抗的公共圏概念と結びつける作業に着手した。同時に、ハーバーマスの公共性概念と実証主義批判との関連を明らかにする作業をおこなった。 宇井純を中心とした「自主講座」運動は、反公害運動ネットワーク形成を明らかにするとともに、フランクフルト学派をはじめとする批判的社会理論の再構築を必要とする社会的・理論的実験であったことを明らかにする作業を遂行している。最終年度である平成21年度には、こうした作業を完成させたい。
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