2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530486
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
木原 滋哉 Kure National College of Technology, 人文社会系分野, 准教授 (20259922)
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Keywords | 社会学 / 政治学 / 社会運動 / 公共圏 / 公害 |
Research Abstract |
本研究「対抗的公共圏と社会運動ネットワーク」の対象は、宇井純を中心とした「自主講座」運動である。本年度は、引き続いて、埼玉大学に所蔵されている「宇井純公害問題資料コレクション」について調査を実施し宇井純自身の足跡をたどり、ネットワーク形成にどのように寄与したのかを調査した。 第一に、何よりも調査の中心は、宇井純と自主講座を中心とする社会運動ネットワークであるが、本年度はさらに、同時代のさまざまな社会運動ネットワークとのかかわりまで調査対象を拡大した。反公害運動だけではなく、反戦・平和運動、学生運動、環境保護運動などとのかかわりの中に、自主講座運動を位置付ける作業を行った。問題は、反公害運動が全国規模でさまざまに組織化される中で、争点の違い、地域や全国など規模の違い、革新自治体かどうかなどの自治体の性格の違いなどによって、どのような社会運動ネットワークが形成されたのかを検証した。 第二に、本年度は、科学技術の合理性がどのようにして社会的妥当性を獲得するに至るのか、この問題が公共圏と対抗公共圏との抗争のなかで、どのように議論されるのかを検討した。公害問題は、公害被害は明白であるのにもかかわらず、科学技術の合理性に照らしてみると、被害発生の因果関係があいまいなままである場合が少なくない。科学技術的合理性に照らして因果関係がはっきりしないなかで、公共圏において公害・環境問題が討議にさらされるようになる。ここから対抗的公共圏の性格について検討を行った。 第三に、聞き取り調査については、研究目的を明らかにできるほどには実施できなかったが、社会運動ネットワークの輪郭だけは明らかにすることはできた。 最後に、本研究の成果については、今後補充調査を実施しながら順次、学会や論文の形で公表していく定である。
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