2007 Fiscal Year Annual Research Report
アルコール依存症者の「語り」からみた回復過程の質的分析と自助グループの役割
Project/Area Number |
19530500
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児島 亜紀子 Osaka Prefecture University, 人間社会学部, 教授 (40298401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 薄幸 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (30288500)
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Keywords | AA / スピリチュアリティ / ハイヤーパワー / 回復 |
Research Abstract |
今年度は、AAにおける回復過程の重要な鍵概念である「ハイヤーパワー」と「他者」、および「ハイヤーパワー」と「spirituality(スピリチュアリティ、霊性)」との関係を、AA関連文献のみならず、宗教学、社会学、倫理学、哲学などの関連書領域の文献にあたることによって明らかにしていくことを企図した。 AAにおける回復過程では、AAプログラムの利用を通して、個々のメンバー霊的に成長するといわれている。さらに、メンバーの霊的成長(spiritual growth)にあたっては、AAプログラムにいうところの「ハイヤーパワー」が「ともにいてくれる」ことを当該メンバーが感得できるかどうかが重要な鍵となるものと考えられる。われわれは、これまでもAAメンバーに対するインタビュー調査を行ってきたが、今年度、さまざまな関連領域の文献を読み込む中で、「ハイヤーパワー」とは何であり、なにゆえにメンバーの霊的成長に大きな影響を持ちうるのかに接近していくことができた。すなわち、われわれの考察によれば、ハイヤーパワーとは、「決して現前しないという特殊な現れ」方をする他者であり、まさにその「現前しない」ことによってAAメンバー一人ひとりを規定し、その個人としてのありようを基礎づけるものである。逆説的ではあるが、「現れない」という特殊な現れ方をするものが「ハイヤーパワー」という絶対的な他者であり、そのような現れ方をする他者のみが、AAメンバー一人ひとりの存在を絶対的なしかたで承認するのである。こうした思想は、「現れないものの現象学」といわれる哲学のうちにすでに明確なかたちで見られるが、これがAAのプログラムにも妥当する考え方であることを見いだし、文章化しえた点に、今年度研究の意義があるものと考える。
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Research Products
(4 results)