2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530507
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Research Institution | Aomori University |
Principal Investigator |
渡部 諭 Aomori University, 社会学部, 教授 (40240486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澁谷 泰秀 青森大学, 社会学部, 教授 (40226189)
吉村 治正 青森大学, 社会学部, 准教授 (60326626)
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Keywords | 高齢者 / 意思決定 / QOL |
Research Abstract |
本研究の初年度の研究目的は、高齢者の意思決定を情報処理モードの視点から検討することと、この両者とQOLとの関係を詳細に検討することであった。そこで、情報処理モードとして半球優位性に基づく意思決定方略を考え、ヒューリスティック意思決定方略とシステマティック意思決定方略とを仮定し、高齢者と非高齢者について調査を行なった。調査の最終有効標本数は476名であり、高齢者(平均年齢71.8歳)は164名、非高齢者(平均年齢47.3歳)は312名であった。 調査の結果、半球優位性は従来言ねれていたような右半球得と左半球得点との差で考えるより、左・右半球のそれぞれの得点単独で考える方が論理的であること、QOLと有意な相関を示したのは左半球得点であり、右半球得点と有意な相関を示したQOL下位尺度は存在しないこととが明らかにされた。 左・右半球の得点の差が何らかの意味を持つとする従来の視点は,左・右半球の機能が1次元のスケール上に存在することを仮定し、われわれの脳が右半球か左半球かの2者択一的な機能性を保持している、とする立場である。左・右半球の機能性の相違は既に大脳生理学的にも確立されているといえるが、問題はどの程度の優位性が各個人に存在するかである。典型的に右半球の機能とされている「考える時にイメージを用いる」と、左半球の機能と考えられている「考える時に言葉を使う」に関する項目は、右半球あるいは左半球に対する明確な因子負荷値が得られなかったため今回の分析からは除外された。因子に対する明確な負荷値が得られなかった原因は、多くの人がイメージと言葉の両方を用いて考えるとする解釈が最も論理的である。この点に関してはさらに詳細な分析が必要であるが、本調査で得られたデータの分析は、左・右半球機能が尺度として多次元の特性を備えている可能性と、さらに意思決定に及ぼす影響について多くのことを示唆している。
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