2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530514
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
宮本 悟 Chuo University, 経済学部, 准教授 (70352846)
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Keywords | 家族手当 / 児童手当 / 社会保障 / フランス / 少子化 |
Research Abstract |
研究計画の第1段階にあたる本年度は、フランス家族給付の今日的状況を体系的に把握することに力点を置き、1.家族給付の制度体系および2.家族給付の政策効果、について検討・分析することを課題とした。 1.家族手当金庫(CAF)が事務手続き上の窓口となる諸手当・貸付金は、児童の出生・養育に関わるもの、広義の貧困問題に対処するものなど、18種類に分けられる。そのうち今年度はとりわけ、家族給付制度の中核をなす伝統的な家族手当(AF)と、2003年に乳幼児関連諸手当の改編にともない創設された乳幼児受入れ給付(PAJE)を中心に、それぞれの沿革・現状を考察した。 2.家族手当については、これまでの研究を踏まえて、L.JOSPIN内閣の下で導入された家族手当の所得制限政策をめぐる評価を検討した。とりわけD.GILLOT報告の分析を通じて、同政策の所得再分配効果が比較的消極的に捉えられていた当時の状況が確認できた。もっとも、BVA-BFM-Paris-Matchが1998年6月に実施した世論調査によれば、富裕層への家族手当を撤廃すべきと考えていたのは国民のわずか19%だけであり、最終的にJOSPIN内閣が普遍主義的家族手当改革とともに所得税制改革を選択した社会的背景が明らかになった。 なお現地調査(2007年9月9日〜9月18日)の際に、フランス家族運動の主要組織であるUNAF(家族団体全国連合)の研究員が、2006年度に合計特殊出生率が2.0に回復した要因の1つとしてPAJEの効果を挙げていた点は興味深い。 これまでに進めてきた研究の成果については、『中央大学経済研究所年報』掲載予定の論文にて公表する。
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