Research Abstract |
岡本は対人関係の調整と透明性の錯覚について検討するため,皮肉や要求のコミュニケーションに関して,Eメールを模した事態で透明性の錯覚の生起に関して実験を行った.皮肉に関しては,前年度までに行った研究もふまえ,送り手の意図性の影響,第三者における錯覚の生起に関して検討を行った.意図性が錯覚量に影響すること,また,第三者における錯覚量は非常に小さいことが見いだされた.また,要求に関しては,送り手の意図明示の効果を合わせて検討し,配慮や要求の履行可能性の錯覚を検討した.配慮については意図明示条件では錯覚は見られなかったが,意図非明示条件では錯覚が見られた.履行可能性に関しては意図の条件に関わらず,錯覚が生じた. 佐々木は,対人関係を調整する宥和行動をに関するKeltner & Anderson(2000)の宥和プロセスのモデルを修正したモデルを提案した.この修正モデルを検証するための実験を行った。実験参加者は刺激人物の社会的違反の状況説明文を読んだ後違反の程度について回答する.その後、刺激人物の違反を指摘された後の反応を観察する.実験参加者は違反者の感情解読を行い,実験参加者自身が違反者に対してどのように行動したいか,動機を回答した.実験の結果,対決を抑制し,感情の和解促進機能が確認され,佐々木の修正モデルの一部が検証された.佐々木はまた,顔文字を添付した場合のEメールの印象に関しても実験的研究を行った. 多門は,対人関係の調整に用いられる言語表現について諸用例を検討し,日本語学の研究知見もふまえて考察を行った. 本年度の研究で,電子コミュニケーションにおける対人的な調整を解明していくためのべースとなる透明性錯覚,宥和行動,コミュニケーション手段としての言語表現や非言語表現(絵文字)に関して基本的な理解が得られたと考えている.
|