Research Abstract |
電子コミュニケーションにおける対人関係の調整の問題を,透明性錯覚に関連づけて研究した. 岡本は,依頼および皮肉のEメールにおける伝達に関して実験を行った.依頼に関しては,Eメール伝達を模した実験を行い,対人関係の親しさの影響を実験し送り手が受け手が実際に感ずるよりも丁寧さを過剰評価することについて検討した.皮肉に関しては,Eメール内容を解釈する実験を行った.まず,送り手側の傍観者が,状況の情報を有さない受け手に皮肉が伝わる程度を過剰評価する,というKeysar(1994)の実験結果を確認した上,表現の不誠実性に関して,無,小,大の3段階で比較した場合に,不誠実性の程度が小さいときに伝達の過剰評価が高まることを見いだした.また,別の実験で,発話が皮肉と認知されるためには送り手の伝達意図が存在が必要なことも明らかにした. 佐々木は,顔文字が,言語メッセージと伴って相互作用を行った場合,どのような条件であれば感情を伝達することが出来るのかを実験的に検討した.実験では,顔文字が表す感情と言語メッセージが表す感情が合致する場合,顔文字を添付することによって,その感情が強められると予想した.実験の結果,罪悪感の内容を含む言語メッセージにm(__)mが伴った場合に,罪悪感が強く解読されることが示唆された.また,罪悪感の解読を促進する顔文字m(__)mが援助動機を強める傾向が見られた.用いられたメッセージから,罪悪感が解読され,送信者を援助しようという協調的行動が促進されるという宥和プロセスがうかがえた. 多門は,対人関係の調整のためどのような書語表現を用いるかを調査した.スミマセンガ/ケド,モウシワケアリマセンガ/ケド,ゴクロウサマデスガ/ケド,オソレイリマスガ/ケド,シツレイデスガ/ケド,ザンネンデスガ/ケド,オキノドクデスガ/ケド,タイヘンデスガ/ケド等の,定型的な,謝罪・非礼詫び・労い型前置き表現の収集し,一部の表現の表現に関しては,意味・機能の違いを考察した.
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