2008 Fiscal Year Annual Research Report
スティグマ化されたリスクの知覚:感情と公正のヒューリスティックモデル
Project/Area Number |
19530570
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
竹西 亜古 Koshien University, 人文学部, 准教授 (20289010)
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Keywords | 社会的認知 / リスク知覚 / 社会的推論 / 感情 / ヒューリスティック / 暗黙連合法 |
Research Abstract |
研究2年目にあたる本年度は、スティグマ化されたリスクの知覚において重要な要因と推定される感情のヒューリスティック機能について、暗黙連合法(Implicit Association Test)による実験と質問紙調査の再分析によって検討した。スティグマ化されたリスクの具体例として、本年度は原子力発電に焦点をあてた。原発に関連する事件事故は、2007年の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原発の被害以降、目立ったものはない。その一方で玄界原発(佐賀県)において一旦中止されていたプルサーマル計画が再開され、2009年5月再処理燃料(MOX燃料)が海外より到着、搬入された。これらの社会状況からは原子力に対する国民のリスク知覚が立地住民において高まる一方、一般においては低まっていると予想される。しかしながら、唯一の被爆国である日本においては、原発を原爆のイメージで捉えることによる感情ヒューリスティックの影響も根強い可能性がある。そこで、暗黙連合法実験では原発に関連する写真・用語を否定的もしくは肯定的感情語と対呈示し、大学生を被験者に反応潜時を測定した。その結果、否定語との連合が対照刺激よりやや強いことが示された。質問紙調査では、健康や環境に関心が高いと考えられる、中学生以下の子どもを持つ母親を対象に、「核兵器」「白血病」「核廃棄物」等の否定的連想語や「地球温暖化防止」「クリーン」等の肯定的連想語との心理的関連度を測定した。探索的因子分析から得られた因子を変数に用いて重回帰分析を行ったところ、原発リスク知覚=0.14^*副産物+0.38^*爆発-0.15^*エコロジーの重回帰式が有効と認められた。また、原発立地住民と一般では連想語との関連度に有意差がみられた。以上のことから、原発はスティグマ化されたリスクのひとつであり、原発のリスク知覚には否定的感情や関連イメージがヒューリスティックとして機能することが示唆された。
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