2009 Fiscal Year Annual Research Report
関係性としての自己:自己概念の対人的・文化的・そして時間的文脈からの総合的検討
Project/Area Number |
19530571
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
金川 智惠 Otemon Gakuin University, 経営学部, 教授 (70194884)
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Keywords | 自己概念 / 他者概念 / 関係性としての自己 / 主語と自己概念 / 自己概念の状況即応的組織化 / working self-concept / 自己概念の認知と情動 / 自己概念による否定的感情制御 |
Research Abstract |
本研究の目的は、関係性としての自己という視点から、自己概念を、対人的・文化的・時間的文脈の3点について、総合的に検討することであった。平成21年度は、(1)主語の様態が自己概念の状況即応的組織化に及ぼす影響、(2)他者概念の複雑化測度の構築を主として探求した。 (1)については、自己記述の際に使用する主語の様態(代名詞・固有名詞)と4つの対人状況((1)集団条件、(2)友人条件、(3)指導教員条件、(4)個別条件)との交互作用が見出されること、即ち、状況即応的自己概念の構造化がより顕著なのは、「わたし」という代名詞を用いる時であり、固有名詞を用いて自己を想起する場合は状況の変化を受けにくく、内的特性に言及したより一貫した内容になるであろうと予想した。一部は現在分析中であるが、これまでのところ、予想を支持する傾向が見出されている。 (2)他者概念の複雑化測度の構築については、より精緻に検討すべく、実験的手法を用いた。他者概念が複雑に分化している程、対人状況の違いに即応した自己概念の記述が顕著になり、またこのことは、対人状況における適応的行動と関連すると考えられるため、他者概念の複雑化を様々な適応指標との関係から吟味できると予想した。即ち、(1)同じ個人であってもどのような自己概念が想起されるかは状況により異なること、(2)またその内容によって情動反応が同じ個人によっても変化することを検討した。その結果、(1)肯定的な自己側面へのアクセスが求められる状況と否定的な自己側面へのアクセスが要求される場合では、同じ個人であっても情動反応が異なり、(2)後者は前者に比べて自己評価が低く、またうつ気分等の否定的情動が支配的になること、しかしこの後肯定的な自己側面へのアクセス強化をすると、自己評価や肯定的情動が再度高まることが示された。 以上の傾向は、学生のみならず、企業現場の社会人についても同様に観察された。これは、否定的感情が喚起された場合、その制御に自己概念の肯定的側面・要素へのアクセスを強化することが効果的であることを示しており、将来的には企業現場での予防的メンタルヘルスの実現への一助になると考えられる。
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Research Products
(1 results)