2009 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期における自閉症児、ADHD児の向社会的行動の発達に関する研究
Project/Area Number |
19530575
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本郷 一夫 Tohoku University, 大学院・教育学研究科, 教授 (30173652)
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Keywords | 広汎性発達障害 / ADHD児 / 「気になる」子ども / 社会性発達支援 / 向社会的行動 / 保育所 / リレー |
Research Abstract |
一般に、広汎性発達障害児、ADHD児の社会性発達支援としては、「集団からの逸脱行動を減少させる」などといった適応を目指すものが多い。いわば、他者からの刺激を受動的に受け入れ、集団に適応し、安定的に生活していくことが重視されていたと言える。しかし、発達障害児は単に刺激を受容するだけの存在ではない。むしろ、他者に対して積極的に働きかけうる存在だと考えられる。また、このような向社会的行動は他児からの肯定的評価を生み出し、仲間関係を形成することに寄与すると考えられる。このような観点から、本研究は、保育の場における自閉症児、ADHD児の向社会的行動の発達を明らかにするとともに、自閉症児、ADHD児の向社会的行動が他児との仲間関係の形成、発展にどのように影響を及ぼすかという点について検討することを目的とした。 平成21年度は、9か所の保育所においてVTRを用いて、不織布リレー場面における行動観察を実施した。具体的には、3歳児、4歳児、5歳児クラスにおいて、頭に不織布をのせて、チーム対抗のリレーを行うというものであった。リレーは、一人で不織布をのせて移動する「ひとり条件」と二人で手をつないで移動する「ペア条件」を設定した。この不織布リレーの設定では、自閉症児、ADHD児、「気になる」子どもの「向社会的行動」の生起と他児の「向社会的行動」、それと同時に運動協応の発達を同時に捉えられるような設定がなされていた。その結果、(1)不織布リレーにおいて最も多く見られた肯定的行動は、対象児から他児への肯定的行動、他児から対象児への肯定的行動いずれにおいても「応援する」であった。(2)頻度は少なかったものの、対象児は「相手が落とした不織布を拾う」という肯定的行動を他児から受けているだけではなく、他児に対しても同様の肯定的行動を行っていた。(3)対象児が応援席にいる場面では、他児がリレーをしている際に不織布を落とした場合にそれを教えてあげるというような肯定的行動も見られた。(4)ペアでのリレーでは、他児が対象児を先導する形でリレーを行い、バーを越える際にも対象児が越えるのを待ってから再び歩き始めるなど、他児が対象児の動きに合わせて運動を調整しているような様子が見られたペアがあった。 以上のことから、自由遊び場面よりもルール遊び場面の方が、場面を共有しやすいため、相互の向社会的行動が生起しやすくなると考えられる。
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