Research Abstract |
本研究は,教師の勇気づけ実践が児童の学級適応過程に及ぼす影響を実験的かつ事例研究的に検討することを目的としている。平成19年度は,これまでほとんど検討されていなかった低学年児童への影響過程に焦点を当て,特定の抽出児を継続的に面接・観察することによる担任教師の勇気づけ実践の効果と担任教師自身の態度構造の変容過程を記述することを目的とした。研究参加者は,児童に関しては小学1年生19名,2年生24名の計43名であり,特定児童の変容過程を検計するため,事前に実施した質問紙の回答から,学級適応あるいは教師期待認知が低い1年生3名,2年生5名を抽出した。教師に関しては,それぞれの学級の担任教師2名(いずれも女性で,教員暦約30年)に協力を求めた。 まず,2名の教師に勇気づけトレーニング(9セッション,計約20時間)を行い,その後各自の学級で勇気づけを実践するよう求めた。児童や学級の変容過程を測定するため,実践前,実践中(1ケ月経過時),および実践後に,学級適応や学級雰囲気,教師期待の認知などを含む質問紙を児童に実施した。上記の3つの時点で抽出児と教師に対しては面接を行い,抽出児には学級イメージについて,教師には学級イメージと勇気づけ実践について自由回答を求めた。また,この実践期間において,実験者は週に一度各学級を訪問し,教師と児童の行動を観察しビデオ記録した。教師には内省記録の提出も求めた。 記録データが膨大であり,まだ十分な分析結果が出ている段階ではないが,全体的には,教師と抽出児の学級に対するイメージは肯定的に変容することが認められ,抽出児においては友人関係が広がり,授業への意欲や参加度も高まる傾向が見られた。他方,教師においても,教員としての成長を自覚するような内省が報告されるなど,勇気づけ実践の肯定的な効果が示唆された。
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