Research Abstract |
平成21年度は,平成20年度に実施した第一次調査の結果をふまえ,家族関係を詳細に検討できる尺度等を追加し第二次調査を実施し,分析を行った。調査対象は,三世代家族の祖母,母親,子どもと,核家族の母親,子どもであった。家族の居住地については,全国の対象者を網羅したデータと福井県内のデータについて回収した。また,量的調査から得られた結果を補足するために,インタビュー調査を実施した。インタビュー調査は,都市部,福井県とは異なる地方,福井県に居住する三世代家族および核家族で,第二次調査の対象者から選択した。そして,分析の際には,家族形態,地域,世代という3つの視点を導入した。分析の結果,まず,家族形態や地域により,家族のとらえ方や家族のコミュニケーション等に差異が示された。つまり,家族形態や地域により,成員間の相互交渉の質や量には違いがあることが明らかになった。そして,それらの相互交渉と心理的健康度との関連も示唆された。また,その相互交渉は,自己と他者という直接的な二者関係だけでなく,自分以外の家族成員同士の相互交渉が,間接的に自己の心理的健康度にも影響を与えているというように,まさに家族システムの考え方に合致していた。次に,世代に関しては,少なくとも祖母-孫間においては,世代間の相互作用が,双方にとってプラスに働いていることが示唆された。また,祖母自身のライフレビューにおいて,自身が娘の時代,嫁となった時代,さらには姑となった現在が語られ,そこに家族の中での役割の変化が示されていた。そして,その語りには,個人の歴史なみならず,時代の変化や,時代に伴う家族や社会の変化をも含まれており,大変興味深いものであった。このような高齢者のライフレビューを家族という視点から聴取することは,時代や社会の変化にともなう家族の変化をとらえる上で,貴重な資料であると考えられる。
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