Research Abstract |
平成19度は抑うつ,敵意,神経症傾向に共通する要因としてコントロール不可能性の認知を取り上げその検討を行ったが,コントロール不可能性の認知は確かに共通要因の一つとは考えられるもののその寄与する割合はあまり大きくないことが分かった.平成20年度はその結果を受け,情動のより基本的な構成因子と考えられるネガティプな情動,ポジティプな情動,BIS(Behavioral Inhibition System),および,BAS(Behavioral Approach System)を取り上げ,それらが抑うつ・敵意,神経症傾向の共通要因としてどの程度寄与しているかを調査することとした.調査はおよそ300名の大学生男女を対象とし抑うつ,神経症傾向,敵意,さらにポジティブ/ネガティブな情動の測定尺度,BIS/BAS尺度,および,コントロール不可能性の認知の尺度を実施し得られた結果を統計的に分析し検討した. その結果,上記のうち抑うつ,敵意,神経症傾向に共通する要因となりうると考えられたのはネガティブな情動,BISの2つであった.ただ,コントロール不可能性の認知との効果の大きさを比較してみると,ネガティプな情動はコントロール不可能性の認知とほぼ同程度かやや上回る程度,BISはコントロール不可能性の認知よりもかなり小さいことが分かった.以上のことから前年取り上げたコントロール不可能性の認知は必ずしも効果の小さな要因ではないこと,おそらく,認知レベルではコントロール不可能性の要因が情動レベルではネガティブな情動が共通要因となっているのではないかと考えられた. なお,以上の調査の他,平成19年度に実施した調査結果を日本パーソナリティ心理学会第17回大会で発表し,また,それをもとに千葉大学教育学部研究紀要に論文を執筆し,これまでの成果をまとめる作業も行った.
|