2007 Fiscal Year Annual Research Report
児童養護施設入所児童の発達と可塑性-サクセスフル・アダプテーションを支える要因
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19530633
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
木村 隆代 (向井 隆代) University of the Sacred Heart, 文学部, 准教授 (00282252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐伯 素子 聖徳大学, 人文学部, 講師 (80383454)
齊藤 千鶴 白百合女子大学, 文学部, 助手 (20407597)
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Keywords | 縦断的研究 / 施設入所児童 / 心理社会的発達 / 可塑性 / 適応 |
Research Abstract |
児童養護施設に入所している児童を対象に、主として心理社会的発達の様相を縦断的にとらえることが本研究の目的である。平成19年度は研究開始年度であり、首都圏の複数の養護施設に研究協力依頼を行い、研究の目的と方法の詳細について文書と口頭による説明を行った後、書面による協力同意を得た。その後、職員および児童を対象とする調査を開始した。職員に対しては個別面接調査と質問紙調査を実施し、児童に対しては個別面接調査、行動観察を行った。初年度に測定予定であった幼児期における保護因子になりうると考えられる諸変数には、気質的特徴、知的能力、対人関係の枠組みや感情理解が含まれ、それらの測定はほぼ終了した。また、一般家庭で養育されている対照児童(48名)に対しても気質的特徴や感情理解の測定を行った。今後は、これらの変数が施設入所児童において小学校入学後の心理社会的適応にどのように関連しているかについて縦断的に検討していく予定である。 現時点では対象児童数が限られること(25名)から、統計的な解析よりも質的な分析を主に行ってきたが、感情理解においては、対照児童と施設入所児童の間に違いが見られている。入所児童は対照児童に比べ、物語と感情をマッチさせる課題の成績が低く、特に怒りや恐怖の場面を悲しみととらえることが多かった。このような傾向が今後も続くのかそれとも消失していくものなのかどうかについては、追跡調査によって明らかにしていく。また、対人関係の枠組みでは、対照児童の多くが重要他者として親や家族を挙げることが多いのに対し、入所児童は施設の年長の子どもや施設職員を挙げた。挙げた人物に違いはあるものの、入所児童も対照児童と同様にさまざまな心理的機能を複数のしかし限られた重要な他者に割り振りつつ対人関係の枠組みを育んでいる様子が伺える。幼児期の対人関係の枠組みが今後の社会的適応の基盤となりうるかどうかについて追跡調査で明らかにしていく。
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