2009 Fiscal Year Annual Research Report
児童養護施設入所児童の発達と可塑性-サクセスフル・アダプテーションを支える要因
Project/Area Number |
19530633
|
Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
向井 隆代 University of the Sacred Heart, 文学部, 准教授 (00282252)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐伯 素子 聖徳大学, 人文学部, 講師 (80383454)
|
Keywords | 縦断的研究 / 施設入所児童 / 心理社会的発達 / 可塑性 / 適応 |
Research Abstract |
児童養護施設に入所している児童を対象として、心理社会的発達、特に適応の過程を縦断的にとらえることが本研究の目的である。平成21年度は、面接調査や行動観察を通じて幼児の基礎的情報の収集を継続する一方で、小学校に入学した児童の学校への適応状況に着目してデータ収集を行った。特に、学業面・社会面での適応や自己効力感、語彙力の発達や対人関係の枠組みの変化、および行動上の問題について児童に対し個別に面接調査を行ったり、職員を対象に聞き取り調査や質問紙調査を行ったりして情報収集を行った。 多くの施設では小学校入学に伴い幼児棟から学童棟への移動があるなど、小学校への入学は施設入所児童にとって対照児童以上に多くの発達課題を意味していると思われる。しかし、担当職員の交代や友人関係の変化も含む新たな対人関係の中で多くの児童は対人関係の枠組みを柔軟に修正しつつ適応していくようである。施設入所児童は一般家庭の児童とはかなり異なった対人関係の枠組みを発達させているが、他者への愛情要求をもたない児童はまれであり、年少時に重要他者が不明確であった児童も年齢が上がるにつれて愛情要求の対象を限定していく例もあり、対人関係の枠組みを構築していく力がうかがえる。他方、知的能力の側面においては、語彙力や知能指数の個人差も入所児童の問では大きく、学年が上がるにつれ学業面への影響が現れるか否かを今後明らかにしていく必要がある。同様に、実行機能や情緒的安定性の個人差も大きく、社会的文脈に照らして自己を抑制し適切に行動することができるか否かは、今後の社会的適応に影響する可能性もある。これまでに得られている結果からは、乳幼児期の発達検査の結果や気質的特徴に関わらず小学校低学年までの時点では心理社会的問題を呈する児童は少ないといえるが、小学校高学年以上での適応と関連する要因を縦断的な研究を継続することにより明らかにしていく必要がある。
|