Research Abstract |
社会的隔離(単独飼育)による社会的経験の剥奪が社会行動の発達に大きな影響を及ぼすことは広く知られているが,そうした社会的経験と社会行動発達を媒介している機序についてはほとんどわかつていない。マウスでは,他の雄との身体接触および他の雄由来のニオイが,そうした社会的経験を構成する重要な要素であることが示唆されてきた.今年度は,単独飼育の行動的影響の発達的変化とそれに伴って生じる脳内変化についてc-Fos発現を指標として検討した. 【実験1幼若期の社会行動発達に及ぼす社会的隔離の効果】 隔離効果の発達的変化は基礎データとして重要であるが,マウスではほとんど研究されていない.そこで,3週齢で単独飼育を開始し,1,3,5週後に遭遇テストを行う3つの群を設け,隔離効果の発達的変化を横断的に検討した.ICR系雄マウスを3週齢から単独あるいは3匹1群で集団飼育し,それぞれ.4,6,8週齢で同週齢の集団雄と遭遇テストを行う群に分けた.集団飼育による通常の社会行動発達とそれに対する社会的隔離の効果を横断的に比較・検討したところ,(1)3週間隔離した6週齢の雄においてすでに攻撃行動の増加が認められ,(2)それに伴ってニオイ嗅ぎなどの群居行動が減少することがわかった。 【実験2幼若期の社会行動発達の変化に伴う脳内変化】 実験2の結果を受けて,社会的隔離による社会行動発達の変化に伴う脳内変化をc-Fos発現を指標に調べた.ICR系雄マウスを3週齢から単独あるいは3匹1群で集団飼育し,それぞれ,4,6,8週齢で同週齢の集団雄と遭遇テストを行う群に分けた.但し,実験1と異なり,攻撃行動などが実際に生じることがないように,相手の雄を金網製の小箱に入れた上で,1時間の遭遇テストを行い,テスト終了直後に脳を摘出した.現在,扁桃体を中心に,遭遇テスト時のc-Fos発現パターンについて,その発達的変化を解析中である.
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