2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会的経験が実験室マウスの社会行動発達に影響を及ぼす機序に関する研究
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19530647
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 克紀 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (50261764)
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Keywords | 社会的隔離 / マウス / ニオイ / コミュニケーション / 攻撃行動 / 臆病反応 / c-Fos / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
社会的隔離(単独飼育)による社会的経験の剥奪と社会行動の発達に大きな影響を及ぼす.これまでの研究から,マウスでは,他の雄との身体接触および集団飼育された雄由来のニオイが,そうした社会的経験を構成する重要な要素であることが示唆されている.今年度は,雌における社会的隔離の影響と社会的隔離に伴って生じる雄マウスの脳の発達的変化について検討した. 【実験1 雌マウスにおける社会的隔離の影響】 雌における社会的隔離の影響はこれまでほとんど研究されていない.そこで,若齢期の雌における5週間の隔離飼育の効果について検討した.ICR系雌マウスを,3週齢で離乳後,4週齢から単独または3匹1群で集団飼育し,5週間後に同週齢の集団雌と遭遇テストを行った.その結果,若齢期における5週間の社会的経験剥奪は,(1)雄と異なり,攻撃を増加させなかったが,(2)その一方で,臆病反応は増加させた.これらの結果から,攻撃の増加には雄固有の仕組みが必要だが,臆病反応の増加には雌雄共通の仕組みが関与することがわかった.これは,隔離飼育による攻撃増加が集団雄由来のニオイ提示によって抑制されることと矛盾しない. 【実験2 若齢期の社会的隔離に伴う脳内変化】 社会的隔離による脳の発達的変化をc-Fos発現を指標として調べた.ICR系雄マウスを3週齢から単独あるいは3匹1群で集団飼育し,それぞれ,4,6,あるいは8週齢で同週齢の集団雄と遭遇テストを行った.但し,攻撃行動などが実際に生じないように,相手の雄を金網製の小箱に入れた上で1時間出会わせ,テスト終了直後に脳を摘出した.遭遇テスト時のc-Fos発現パターンについて解析したところ,発達的変化に脳部位による違いが認められ,社会的経験の剥奪が影響を与える脳部位は週齢によって変化することがわかった.
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Research Products
(2 results)