2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530651
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高野 陽太郎 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20197122)
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Keywords | 外国語副作用 / 外国語 / 第二言語 / 母語 / 思考 / 記憶検索 / 再認 |
Research Abstract |
これまでに行なった研究では、充分に習熟していない外国語の聞き取り及び産出をしている最中には、思考(非言語的情報処理)能力が一時的に低下することを実験的に示した。この能力低下が「外国語副作用」である。 本年度行なった実験では、第一に、この外国語副作用が外国語の読解中にも生じるか否かを実験的に検討した。被験者は日本人の大学生であり、母語条件では日本語の、外国語条件では英語の文章を読みながら、同時に思考課題を遂行した。思考課題は、凹凸で記された2個の数字を指の触覚のみで認知し加算するという課題であった。この実験の結果、母語条件と外国語条件の問には、思考課題の成績には差が見られなかった。しかし、言語課題においても両条件の間に有意差は見られなかった。このことは被験者にとって、この実験で呈示された外国語が母語と同様に容易であったことを示している。従って、外国語の読解中に外国語副作用が生じるか否かについては、明確な結論を引き出すことができない。 第二に外国語の処理が記憶の検索に与える影響を検討した。日本人の大学生が被験者となり、単語と線画を用いた再認課題と同時に、聴覚的に呈示される言語課題を行なった。実験の結果、言語課題が母語(日本語)であった場合には再認課題の成績は影響されなかったが、言語課題が外国語(英語)であった場合には再認課題の成績は大きく低下した。即ち、外国語副作用が観察された。但し、この低下は、記銘項目が同一のテーマに関連しているときには現れず、記銘項目の間の関連性が薄い場合のみに観察された。
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