2007 Fiscal Year Annual Research Report
チンパンジーのカテゴリー認識に及ぼすラベル化の効果に関する比較心理学的研究
Project/Area Number |
19530653
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 正之 Kyoto University, 霊長類研究所, 助教 (80280775)
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Keywords | チンパンジー / カテゴリー / 食物 / ラベル / 図形文字 / 線画 |
Research Abstract |
Hl9年度は、チンパンジーにおける「食物」カテゴリーの認識について調べるため、大人5、子ども3の計8個体を対象に、画面に提示された4つの選択肢中に1つだけ含まれる食物の写真を選択する課題を訓練した。実験に用いた写真はすべてヒトによる典型性評定をおこない、訓練はヒトがもっとも典型的と評定した写真を用いておこなった。すべての個体で訓練は完了した。その後のテストで、ヒトは典型性を低く評定したがチンパンジーでは食物とするであろう草本や樹木の実などの写真を用いてテストをおこなった結果、チンパンジーでは高い選択率を示した。一方、ヒトでは典型的な食物と評定された調理済み食品の写真では、個体差が見られ、ほとんど選択しなかった個体もいた。これらの結果から、ヒトとチンパンジーとの食物カテゴリーの認識の違いが示された。このテストの後、母子3組のチンパンジー6個体を対象に、食物とラベルとの関係を学習させる訓練をおこなった。使用したのは、リンゴ、バナナ、キャベツ、サツマイモの写真と、それらの食物を表す図形文字4種類と、さらにそれぞれの食物を表す線画(各1種類)であった。課題は遅延見本あわせ課題で、第1段階として、食物写真を見本として提示し、その後に4種類の食物写真を提示して、見本と同じ食物を選択させた。第2段階として、図形文字かまたは線画を見本として提示し、写真を選択肢として提示する訓練をおこない、現在もこの訓練を継続中である。成果の公表としては、Animal Cognition誌にチンパンジーにおける絵の認識能力に関する論文を、Primates誌にチンパンジーにおける視覚的好みの発達的変化に関する論文をそれぞれ発表した。
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