2009 Fiscal Year Annual Research Report
母性発現に及ぼす妊娠・授乳期内分泌かく乱物質曝露の影響
Project/Area Number |
19530659
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
富原 一哉 Kagoshima University, 法文学部, 教授 (00272146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 園子 筑波大学, 人間総合科学研究科, 教授 (50396610)
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Keywords | 空間学習 / 情動性 / エストロゲン / 母性行動 / diethylstilbestrol / 行動神経内分泌 / 妊娠期 / マウス |
Research Abstract |
近年、妊娠や出産、授乳中のエストロゲンやプロゲステロン等の劇的なホルモン変化は、雌親の中枢神経系に長期的な構造的変化を引き起こし、学習能力の向上や情動性の安定をもたらすことが報告されている。一方、妊娠・養育期間中の内分泌かく乱物質への曝露は、これらのホルモンの働きを阻害し、長期的・多面的に雌親の行動に対して影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究は、妊娠・養育期間中の雌親への内分泌かく乱物質への曝露が、雌親自身の情動性、社会性に与える影響を明らかとし、さらにその作用機序を探ることを目的とした。平成21年度は、妊娠後期に合成エストロゲンであるDiethylstilbestrol(DES)を経口投与された雌親マウスの、情動行動と空間学習能力を検討した。その結果、情動性については、卵巣切除条件において出産-DES群の明暗箱移動テスト明室滞在時間の低下による情動性の亢進が示され、雌親マウスの情動性に対するDES曝露の効果はエストロゲンの循環レベルの差によって生じるものではないことが明らかとなった。また、空間学習に関しても、バーンズ迷路装置を用いた逃避位置獲得試行において、出産の有無にかかわらずDES曝露によってエラー数が増大し、また、逃避位置を逆転した試行においては、統計的に有意ではないものの、出産群でのみDES曝露によってエラー数が増大する傾向にあった。したがって,妊娠期の内分泌かく乱物質曝露はメス親の空間学習を阻害する可能性が示されたと言える。これらの結果は、妊娠期の内分泌かく乱物質への曝露が、雌親の適応的な母性発現を阻害する可能性を示唆しており、内分泌かく乱物質の神経発達毒性評価については、胎児期同様、妊娠期についても慎重に検討する必要性があることを指摘するものである。
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