2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヘーゲル主義からみたデューイ教育思想の再評価の動向とその可能性に関する研究
Project/Area Number |
19530691
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松下 晴彦 Nagoya University, 教育発達科学研究科, 教授 (10199789)
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Keywords | デューイ / ヘーゲル / 教育思想 / 教育哲学 / アメリカ |
Research Abstract |
本研究の「研究目的」は、ミシガン大学およびシカゴ大学時代のデューイの講義ノートの分析をもとに、デューイの教育思想の形成過程におけるヘーゲル哲学の影響と役割について再評価をしようというものであった。 20年度の「実施計画」としては、第一に、デューイの演習と講義ノートを入手し、観念論主義からの離脱と実験主義の形成について、ヘーゲル的観点から分析すること、第二に、デューイ自身の講義ノートを第一次資料とするデューイ研究をレビューし、それらを批判的に分析するとともに、デューイに直接影響のあったはずの19世紀の米国のヘーゲル主義、特にセントルイス学派その他について再検討し、改めて当時のヘーゲル研究の水準の中にデューイ哲学を位置づけることを課題とした。 「実施計画」の第一については、南イリノイ大学のデューイセンターへの訪問の機会をもたなかったため、米国のデューイ研究者による言及の第二次資料の分析に限定されたが、ミシガン大学ベントレー・コレクションにあるクーリーによる講義ノートの一部を入手、分析し、ミシガン大学時代のデューイの社会哲学観(既に相互作用と関係性による把握などが見られること)を確認することができた。第二については、デューイの再評価において、ヘーゲル哲学からの影響を従来の論理学や認識論に加え、社会哲学的な側面においても認める傾向が明らかとなった。従来のデューイ思想の展開、観念論期からの離脱、実験主義期、自然主義期といった図式に換えて、「ヘーゲル的残滓」はデューイの生涯にわたり認められることを確認した。他方、デューイ自身のヘーゲル理解の水準、また「ヘーゲル的残滓」のより具体的な内容については今後の継続的課題である。
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