2008 Fiscal Year Annual Research Report
デューイの国際的教育文化理論の現代的意義に関する研究
Project/Area Number |
19530692
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
早川 操 Nagoya University, 大学院・教育発達科学研究科, 教授 (50183562)
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Keywords | 日本社会の文化的矛盾 / 内からの文化的変容 / 公衆による自由な探究 / 父権的温情主義の限界 / 和魂洋才にみる矛盾 / 文化的二重性の克服 / ケアと希望の教育 / 意味の民主主義 |
Research Abstract |
平成20年度は、ジョン・デューイが1920年代初期に日本を訪問した時に書かれたわが国のリベラリズムに関する考察と、国際的な視点から見たわが国の民主主義や教育の課題に関する見解などを分析して、その研究成果を日本デューイ学会第52回大会で発表した。その研究成果を同学会紀要に投稿するとともに、同学会50周年記念論文集にも「日本の文化と民主主義」に関する論文を寄稿することが承認された。また、中国での学会誌にも現代教育改革に論究した論文が掲載された。 1. デューイが日本に滞在している間に観察した20世紀初期日本社会の文化的矛盾を分析することによって、彼が考えていた当時のわが国の民主主義とリベラリズムの課題と限界と内からの文化的変容の必要性が解明された。 2. デューイは、当時の日本の専制主義的官僚制と天皇制をイギリスとインドとの支配・従属関係やロシアのツァーリズムの模倣という観点から批判したことを考察し、当時の日本の文化的政治的課題を克服するためのリベラリズムの課題として日本の公衆による自由な探究やコミュニケーションの普及を提案したことを究明した。 3. アメリカ実験主義的リベラリズムの観点から、デューイは、当時の日本社会が内からの変革を実現するために、父権的温情主義や和魂洋才の伝統に含まれる文化的矛盾を批判し、日本人の西洋文明の摂取に見られる文化的二重性の克服を当時のリベラリズムの文化的課題と考えていたことを解明した。今後は、これらの課題を当時のわが国でどのように認識されていたかを検討する必要があることが明らかになった。 本年度はデューイの実験主義的リベラリズムの現代教育に対する示唆として「ケアと希望の教育」の促進について提案し、「欲望の民主主義」に根ざした教育から「意味の民主主義」を切り開く教育への転換について検討した。また、本年度の研究成果からの示唆として、1920年代当時のわが国におけるデューイ実験主義的リベラリズムが日本の教育者によってどのように理解・受容されていたのかをさらに解明する必要を認識した。
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Research Products
(4 results)