2008 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な地域づくりと教育改革主体の形成との往還的構造に関する実証的研究
Project/Area Number |
19530706
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
内田 純一 Kochi University, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (80380301)
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Keywords | 教育改革 / 主体形成 / 持続可能性 / 地域づくり / 公務労働 |
Research Abstract |
当該年度は「持続可能な地域づくりの担い手形成に関する研究」と「持続可能な地域づくりと教育改革主体の形成の往還的構造の解明」に取り組んだ。 前者では、高知県日高村における地域教育づくりの実践、高知県幡多地域における大学づくり運動を分析の対象とした。日高村の実践では、元地域教育指導主事が「地域支援企画員」として村に残り、村立図書館の設置を実現させるとともに、「日高読もう会」「日高村子どもの未来応援団」などの活動を中心に、住民自身が地域教育づくりの担い手となる状況を生み出してきている。大学づくり運動では、幡多地域に暮らす住民たちが自分たちの地域にある豊かな学習資源を大学の研究や活動に活かす発想で、地域づくり教育を展開してきている。地域と向き合う大学のあり方を問い直すこの実践は、地域・住民とともに地域を共同創造していく教育と研究の機能を備えた「地域総合学部」(地域づくり学科、生活環境学科、文化総合学科)の創設や「地域サテライト」の設置など、全県的な『社会人学習機関』としての県立大学改編構想へと結びついている。 後者では、これまで取り上げた実践を再検討することで、「活動の展開レベル」「主体の認識レベル」においてそれぞれ往還的構造を整理した。展開レベルでは、「公論の場」→「地域調査活動」→「個別活動」→「協働活動」→「地域計画」→「地域づくり実践」→「公論の場」が螺旋的に繰り返される。「認識のレベル」では、「問題の意識化」→「問題の自己意識化」→「葛藤や矛盾の統一」→「相互承認」→「自己の学習計画」を経て「日常生活の中で実践する主体」へと向かう。この構造は、高知県四万十市職員による「聞く学習」を通した担い手づくりの実践の中でさらに確かめられている。そこでは「公務労働」を住民共有の「自治体創造労働」として捉えなおし、持続可能な地域づくりにむけて新たな公務の在り方が展望されてきている。
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