2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世後期から明治初期にかけての手習塾絵画資料のデータベース化と分析研究
Project/Area Number |
19530708
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 理恵 Hiroshima University, 大学院・教育学研究科, 准教授 (80216465)
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Keywords | 手習塾 / 手習い / 師弟関係 / 絵画資料 / 黄表紙 / 絵馬 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近世後期から明治初期の手習塾のようすを描いた絵画資料を分析し、手習塾について環境・人(師弟間および学習者間)・モノの観点から分析することを通して、江戸時代の文字学びの特徴を明らかにすることにある。 本年度は最終年度として、これまでに収集した絵画資料の分析をおこなった。その結果、以下のような結論を導き出した。 手習塾場面を歴史資料として使用するには、絵画の性格を把握した上で、その文脈のなかで読み解くことが重要である。師匠主体の絵画構成や座席順位、門人の容儀や姿勢、小謡指南の図から、手習塾は手習いの教場であると同時に、身分制社会における人間交際の規範を体得する場として認識されていたと考えられる。 手習塾の、子どもやその親のニーズに対応し、模倣と習熟を基本とした、学習者主体の個別学習形態には比較的良い評価が与えられてきた。近代学校での画一的一斉教授と対照的な手習塾にこそ本来的な教育の姿を見出そうとする見方もある。しかし、手習塾における師匠主体の個別学習は差別的な形式ともいえる。手習塾で子どもたちは時空間を共有しながらも、目線は常に机の上の紙に注がれており、相互の学び合いなどは期待できない。身分制社会の枠内での学習形態であったといえる。 また、研究内容および、収集した絵馬や黄表紙に掲載された手習塾絵画資料の写真を豊富に載せた報告書を公表した。
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Research Products
(2 results)