2008 Fiscal Year Annual Research Report
PISA調査以後のドイツの教育行政の「学校プログラム」政策から「学校評価」への展開
Project/Area Number |
19530719
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
前原 健二 Tokyo Denki University, 理工学部, 准教授 (40222286)
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Keywords | ドイツの教育政策 / 学校評価 / 学校プログラム / 新自由主義 / 学校の自律性 / PISA調査 / 教育の機会均等 / 教育スタンダード |
Research Abstract |
本研究の目的は、近年のドイツにおける「学校評価」政策を「学校の自律化」及び「学校プログラム」政策との関係構造及びこれまでの学校管理改革の流れの中で近年の議論の位置を検討することであった。 1ドイツでは1990年代に「学校の自律化」を標榜する政策が導入され、自律的な学校経営のツールとして学校プログラムの編成が多くの州で義務づけられた。これらの政策と「学校評価」政策は、新自由主義的な公務・行財政システムの再編の流れにおいて一貫したものと理解することも可能であるが、教育政策の断絶・転換を含むものと理解することもできることが明らかになった。前者はPISA調査以後の教育スタンダードの設定と統一テストの導入の意味を重視しないのに対し、後者はそれを決定的な転換点と見なしている。 2ドイツの学校評価の制度化は非友好的な外部評価、数値による客観的評価を重視する「イギリス・モデル」、友好的な外部評価を特徴とする「オランダ・モデル」、規範的な到達目標としての教育スタンダードに関わる内部評価を重視する「スカンディナビア・モデル」などが混在した状況であることを示すことができた。工業製品の標準化規格を模した「学校標準化規格」による個別学校ごとの認証評価の制度化を進める州もあり、イギリス・モデル以上の学校評価の客観化が進む可能性もある。 3学校評価政策が「教育の機会均等」の原則や「分岐型学校制度の当否」と結びついて論じられている点がドイツにおいては特徴的であることを具体的に明らかにした。これは1960年代以来、すべての教育改革論議において共通して見られる特徴でもある。今日の学校評価論が提起する教育の機会均等の再定義を踏まえて、戦後ドイツの学校改革の理論史を教育の機会均等の概念史として描き出すことが教育制度論的には重要な課題となる。
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