2009 Fiscal Year Annual Research Report
選択制度を触媒とする公立学校統治(ガバナンス)の再構築に関する研究
Project/Area Number |
19530720
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
長嶺 宏作 Nihon University, 国際関係学部, 助教 (30421150)
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Keywords | 教育学 / 学校選択論 / 公立学校 / 教育ガバナンス / 教育委員会 / 教職の専門性 / 効果ある学校 / 市場原理 |
Research Abstract |
本研究では、学校撰択制度について市場原理の弊害を観察するといった研究態度からではたく、公立学校の教育統治(ガバナンス)の新しい形態を構築するダイナミズムを有するものとして研究の対象とする。学校選択制度についての政策の実施状況を調査対象とする研究が可能となった現在の段階において必要なものは、学校選択制度がどのように教育本来の能動的な可能性と公立学校のもつ効果的な力を発揮させる触媒として機能し得るのかということを積極的、戦略的に解明しようとする研究態度である。特に、1970年代に社会科学研究方法の教育理論への適用の限界を厳しく批判して、教育学独自の理論を構築し、今日までに影響を与えた「効果ある学校」の理論を手掛かりに考察を進めた。具体的には、質の高い公立学校を生み出すための関係者の意欲、努力、協力を導き出す触媒として働く学校選択制度の機能を基礎として再構築される公立学校統治の新しい形態の内実を具体的な制度原理の形で解明しようと試み、日本国内の学校選択制度の事例研究、および、アメリカにおけるチャータースクール政策の事例研究を行った。しかし、どのような学校選択が触媒として学校の改革をもたらしているかについては、学校選択の支持者と批判者ともにブラックボックスまでに到達することができず、制度と実践が別々に議論されている。そのことによってかえって、制度改革と教育実践の改革を結びつけた包括的な議論を難しくさせ、制度と実践の分離をもたらしているのではないかという課題を検討することとなった。
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