2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代アメリカにおける道徳教育のポリティクス:批判的教育研究から見た人格教育の諸相
Project/Area Number |
19530764
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Research Institution | Nagoya Women's University |
Principal Investigator |
澤田 稔 Nagoya Women's University, 文学部, 准教授 (00367690)
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Keywords | 批判的教育学 / アメリカ / 道徳教育 / 人格教育 / 政治学 / リベラリズム |
Research Abstract |
本年度は、主として次の4つの作業に従事した。(1)研究対象である米国の人格教育の背景をなすと考えられる政治・社会状況に関する理解を深めるための政治学的研究、(2)分析視角の精緻化のための、米国における批判的教育理論に関する文献研究、(3)米国における人格教育に関する論争の要点を的確に把握するための資料収集、(4)米国のカリフォルニア・ウィスコンシン・ノースカロライナ州における小学校やミドルスクール、ハイスクールでの実態調査、以上である。 これらを通じて、米国における道徳教育の現状を批判的教育理論の観点から分析する可能性、及び、その方法論的視覚がより明確化でいるようになった。特に、人格教育がNCLB法の中で推進されている現状を、ネオコンサーヴァティズムとネオリベラリズムの結合関係として分析する作業や、人格教育と呼ばれる道徳教育の教育現場における実践動向に関するより具体的な分析に踏み込むことができるようになった。しかし、年度末に新資料が発掘されたので、この分析の発表は学会での口頭発表に留まっており、論文の執筆は21年度にずれこむことになった。また、多様な価値観の共存・多文化共生に向けたりベラルな道徳教育の可能性に関する考察に関しては、文献研究に時間がかかっており、これも論文としての発表は21年度になる。 他方で、実地調査によって、米国での人格教育を考える場合、道徳教育思潮や理念の動向に関してのみならず、出版資本により編集されたマニュアル化された教材の普及という政治経済学的要因が無視できないことが明らかになった。しかし、この点も研究成果として発表するには、まだ多少時間がかかることになりそうである。
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Research Products
(4 results)