2009 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ、オーストリアのデュアルシステムの変容と学校型職業教育・訓練の役割
Project/Area Number |
19530768
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
佐々木 英一 Otemon Gakuin University, 心理学部, 教授 (30125471)
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Keywords | ドイツ / オーストリア / デュアルシステム / 職業教育・訓練 |
Research Abstract |
今年度の研究の成果は、以下の諸点を明らかにしたことである。 1.ドイツのデュアルシステムは、産業構造の変化に伴い従来の製造業中心の訓練からサービス産業型のそれへと大きくシフトしてきている。これに伴い、理論教育の比重が高まり高等教育や学校型の職業教育・訓練が注目されてきていること。 2.一方で、従来製造業での熟練工や手工業での職人として吸収されてきた部分が縮小し、この部分が職業教育・訓練に入れず、「移行システム」と呼ばれる職業教育・訓練準備期間に大量に滞留する事態が発生している。そしてこの部分は移民や社会的に弱い階層の子どもたちが多く含まれる事態となっている。 3.その結果、ドイツの従来の強みであったデュアルシステムが弱まり、他の先進国と同様の高等教育重視への傾向をいっそう強め、それに取り残される階層問題が大きな争点となっている。 4.一方、オーストリアではこうした産業構造の高度化やサービス化に対し、早くから中等教育の高等教育対応と同時の職業教育・訓練対応を進めてきた結果、ドイツより柔軟に対応可能となっている。 5.その結果、近年になってようやくドイツにおいてもオーストリアへの注目が高まってきた。こうした動向をわが国の視点からみた場合、すべての高等学校で大学進学が可能であることは有利な条件であると同時に、職業教育機能をより充実させる課題が浮かび上がってくる。
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