Research Abstract |
平成21年度の研究では,平成19年度ならびに平成20年度の研究に引き続いて,社会的相互作用に関する下記の2つの研究に取り組んだ。 第1は,算数・数学の授業における社会的相互作用の役割や機能に関する研究である。具体的には,新しい算数・数学科学習指導要領において強調されている「算数・数学的活動」に注目しながら,「算数・数学的活動」と社会的相互作用の相互関係という視点から,社会的相互作用を活かした算数・数学の授業のあり方について,実践的な視座から考察を行った。考察の結果,算数・数学の授業づくりのポイントとして,次のような指摘を行った。つまり,活動主義や構成主義において主張されるように,数学は,本来,人間の活動性の所産といえる。しかし,個人的な活動を源とする数学的意味は主観的な性格を有する場合が多い。そのため,活動から導かれた主観的な意味を教室集団において社会的に再構成し,共有された意味に洗練していくことが,教授・学習の重要な目的であり要になる。その意味で,社会的相互作用は,「算数・数学的活動」に基づいて構成された主観的な数学的意味を,教室集団において協定され合意された客観的な数学的意味に転換するという重要な役割と意義を担っていることになる。したがって,このような視座からの算数・数学の授業の充実を図っていくことが重要であることを指摘した。 第2は,上記第1の内容をふまえながら,特定の教材に関する教授・学習モデルを検討する研究である。平成21年度の研究では,Gravemeijerらの先行研究をもとに,小学校の「わり算の筆算」の指導について検討した。検討の結果,社会的相互作用を活かしながら,わり算の意味の形成とわり算の筆算形式との接続に配慮することの重要性を指摘した。
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