2008 Fiscal Year Annual Research Report
大正、昭和前期における国語教科書と教養形成に関する研究
Project/Area Number |
19530845
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Research Institution | Hiroshima University of Economics |
Principal Investigator |
武藤 清吾 Hiroshima University of Economics, 経済学部, 准教授 (30441504)
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Keywords | 国語 / 国語読本 / 国語教科書 / 文芸読本 / 教養 / 中等教育 |
Research Abstract |
日本型教養形成の基盤が、大正、昭和前期の国語教育やその周辺の文化構造の中でどのように生成され発展させられてきたかを研究するため、国語読本類と教養形成の関係について考察してきた。19年度に考察を始めた、岩波編集部編『国語』、芥川龍之介編『日本近代文芸読本』、『赤い鳥』と菊地寛編『新文芸読本』という教養形成に加え、垣内松三編『国文選』とその国語教育論の重要性も明確になってきた。これらは総称して教養実践と呼ぶことができ、そのなかに国語教育実践や文芸実践、綴方実践が位置づいていることも明瞭になったのは19年度と同様である。20年度は、1920年代から30年代にかけて刊行された旧制中学校向け文芸読本、「国語」読本のうち、芥川龍之介編『近代日本文芸読本』、菊池寛編『新文芸読本』、垣内松三編「国文学大系現代文学」、『国文選』、岩波編集部編『国語』に収められた作品の分析を徹底して行った。また、文芸実践や教養実践という概念を提示して、実践に彩られた時代であった1920年代から30年代にかけて展開された龍之介や寛の実践、鈴木三重吉創刊『赤い鳥』を舞台に展開された実践の意義を明らかにしていった。さらに、垣内や西尾の「国語」読本編集とともに展開された「国語」教育論の意義と問題点を探った。その結果、日本型教養の本質が他者との共同をすすめる実践知であり、その教養は自由な実践の場で生成されるものであることも明確になってきた。また、その実践を展開していく過程で文芸実践と「国語」教育実践では共通点と同時に決定的な相違点があることが明らかになってきた。20世紀前半の「国語」教育は文芸教育の側面が強いことが連想されるが、実際には実践当初から決定的な分岐が生じていたことが明らかになった。
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Research Products
(5 results)