2007 Fiscal Year Annual Research Report
人工内耳装用児の音韻意識の特徴と規定要因に関する研究
Project/Area Number |
19530860
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
長南 浩人 Tsukuba University of Technology, 障害者高等教育研究支援センター, 准教授 (70364130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城間 将江 国際医療福祉大学, 保健学部, 教授 (80285981)
濱田 豊彦 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80313279)
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Keywords | 人工内耳 / 音韻意識 / 音節分解 / 音節抽出 / 聴覚障害児 |
Research Abstract |
健聴児と比較して、読み書き能力の発達に遅滞が見られる聴覚障害児について、音韻意識の発達を検討することは、聴覚障害児教育の課題の1つである。近年、聴覚補償に関わる機器の技術および医療の進歩が目覚しく、新たな聴覚補償の方法として人工内耳という選択肢が登場し、日本でも徐々に幼児期からの手術事例が増えつつある聴覚障害児の音韻意識の発達は、聞こえの程度と関連があることから、人工内耳を装用した状態で成長した聴覚障害児における音韻意識が、どのように発達するのかについて明らかにすることは重要な研究課題である。 そこで、人工内耳装用児38名を被験対象して、音韻分解検査と音韻抽出検査を行なった。その結果、人工内耳装用児の音節分解、音節抽出は、全体的には健聴児に近い発達を示していることがわかり、このことから人工内耳装用児の音韻表象が音のイメージによって形成されていることがわかった。以上のことから、人工内耳が、音の知覚のみならず、音韻意識という認知レベルの発達にも影響していることが明らかになり、人工内耳を活用した言語発達への効果が明らかになったといえる。ただし、拗音や拗長音といった一部の特殊音節の分解に補聴器同様字と同様の発達が見られた。このことは、人工内耳装用児の中にも、補聴器装用児と同様に文字のイメージを利用して音韻を表象している者がいることを示唆しており、人工内耳装用児の音韻発達に多様性が認められたといえる。今後は、3歳代や4歳代の人工内耳装用児を対象に多様な音節数や音韻的構成をもつ語について検討し、音韻意識の発達をより長期的に明らかにすることが課題である。また本実験は、音韻分析に関する指導を何も受けていない状態の人工内耳装用児を対象として行っていることから、このような人工内耳装用児に音節分解や音節抽出の指導を行った場合、これらの反応がどのように変化するかといった教育的な課題も今後の検討課題といえる。
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