2008 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児の階層的概念の獲得における帰納的推論過程の分析
Project/Area Number |
19530866
|
Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
井坂 行男 Osaka Kyoiku University, 教育学部, 准教授 (40314439)
|
Keywords | 聴覚障害 / 階層的概念 / 帰納的推論 |
Research Abstract |
聾学校児童生徒の「言語獲得」や「概念獲得」における課題を解決するための示唆を得ることを目的にして,「生き物」に関する概念の階層的な概念構造の獲得における帰納的推論を促す要因を検討した。 聾学校児童生徒および小学校児童ともに,帰納的推論が認められる条件は同様であった。上位下位の概念関係理解に基づく一般帰納においては前提の典型性が高いほど,また,結論の特殊性が高いほど,帰納的推論が促される傾向が示されていた。等水準関係における特殊帰納においては前提と結論の類似性が高いほど,帰納的推論が促される傾向にあった。これらの結果から,典型性の高さはより上位の概念との関係理解に基づく帰納的推論を導き,概念的な接近も同様に帰納的推論を導きやすいということを示している。 上位下位の概念関係と等水準の概念関係が含まれている混合帰納も提示事例の概念水準が上位下位の概念水準にまたがる混合帰納においても,前提の単純増加性の一般と特殊で,より事例が多い方が帰納的推論が促される傾向が認められた。また,この混合帰納においては聾学校児童および小学校児童の低学年段階から中学学年段階にかけての獲得傾向が示されていた。 この結果,聾学校児童生徒においても,小学校児童と同様に帰納的推論が促されていることから,それぞれの概念関係に応じた推論状況を踏まえた上で,聾学校児童生徒の帰納的推論が促されやすい条件に応じた概念事例の提示によって,より多くの概念事例や概念的知識の獲得を促していくことが重要であると考えられた。
|