2007 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症児のコミュニケーションブレイクダウンへの対処能力
Project/Area Number |
19530873
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大竹 喜久 Okayama University, 大学院・教育学研究科, 准教授 (00304288)
|
Keywords | 自閉症 / コミュニケーション / アセスメント |
Research Abstract |
11名の自閉症児を対象として、自由遊びの時間に、要求行動の自発とコミュニケーションブレイクダウンの機会を意図的に設定し、彼らのリペア方略について分析を行った。ブレイクダウンのタイプとして、「言葉による明確化要請」、「身振りによる明確化要請」、「注目そらし」、「誤解」の4つを準備し、それぞれ6エピソードずつ、計24のブレイクダウンの機会を与えた。その結果、24のコミュニケーションブレイクダウンエピソードに対し、どの対象児も大部分のエピソードでリペアを試み、当初の目的を達成していた。また、単に最初のコミュニケーション行動を繰り返すことによってリペアを試みるよりは、最初のコミュニケーション行動を何らかの形で修正することによりリペアを試みる傾向にあった。「修正」においては、言語を用いる対象児群は「取替」の割合が比較的高かったのに対し、言語を用いない、あるいは限定的に用いる対象児群は「追加」の割合が比較的高かった。ただし、「追加」や「取替」の割合が高いからといって、必ずしもあらたな情報を追加する形でリペアを行っているわけではなかった。言語を用いない、あるいは限定的に用いる対象児群よりも、言語を用いる対象児群の方が「誤解」に対して高い確率で相手の身体に触れる形態を用いていた。その一方で、言語を用いる対象児群では「疑問」に対してのみ、発話に頼ってリペアを試みている傾向、さらには「疑問」のブレイクダウンに対し、最も多い語数でリペアを試みている傾向が見出された。自閉症児についてこうしたリペア能力を見出したのは本研究が初めてである。また、「主体性」や「問題解決力」などが障害児教育の実践現場ではキーワードとなっているが、本研究で使用されたような枠組みを持って自閉症児を見ていけば、彼らなりの「主体的な姿」「問題解決力」が見出せるということ、さらには、こうした既存の力を生かしていくことこそコミュニケーション指導の課題であるという方向性を実践現場に示すことができたという点で意義がある。
|