Research Abstract |
研究代表者は,頂点作用素代数に附随する高次Zhu代数の上の両側加群について,頂点作用素代数の表現論をとらえるために必要な性質を整理し,その構成法について研究した。その結果,表現論の既知の結果を部分的に利用することによって,そのような両側加群が理論的に再構成されることが分かった。結果的には,この種の両側加群を用いることで高次Zhu代数による頂点作用素代数の有理性の判定がなされるかどうかについて疑問の余地が残ることとなったので,来年度も引き続き研究を進め,その可否を突き止めたいと考えている。関連して,研究分担者の安部利之は,頂点作用素代数の上の加群に附随する両側加群の高次Zhu代数の場合への一般化を行った。 一方,本研究の共形場理論への応用に際しては,本研究で取り扱う代数系やその表現が無限次元であるため,通常の連接層の理論が直接利用できるわけではない。そこで,研究代表者は,研究分担者の永友清和氏と打ち合わせを行い,本研究を共形場理論へ応用するための準備として,頂点作用素代数に附随するカレントLie代数をリーマン面上で構成するために必要となる複素幾何的な知見について整理を行った。また,加群に附随する余真空の層の連接性を考察するために必要となる複素幾何学的な知見についても整理を行った。 そのほか,研究代表者は,Gerald Hoehn氏らとの打ち合わせを通じて,同氏による共形デザインの概念とMichael Tuite氏による頂点作用素代数の公理をシステマティックに用いる計算方法を組み合わせることによって,対称性の高い頂点作用素代数に関する研究代表者の過去の研究成果の一般化と精密化に取り組んだ。また,研究代表者は,研究分担者の荒川知幸氏との打ち合わせを通じて,W代数と有限W代数の関係を念頭におき,有限W代数における諸結果の頂点作用素代数における類似が成立するかどうかに注意して研究を進めてはどうかとの示唆を得た。これらの研究については,来年度以降に継続して研究を実施し,発展させていきたいと考えている。
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