2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540039
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
権 寧魯 Kyushu University, 大学院・数理学研究院, 准教授 (30302508)
|
Keywords | 総実代数体 / ヒルベルトモジュラー群 / ヒルベルトモジュラー多様体 / セルバーグ跡公式 / セルバーグ型ゼータ関数 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度までに得ていたヒルベルトモジュラー曲面に対するセルバーグ型ゼータ関数に関する結果の拡張や応用について研究した。Kをn次総実代数体とし、その整数環の元を成分にもつ次数2の特殊線形群であるヒルベルトモジュラー群Гを考える。この群は上半平面n個の直積に不連続に作用し、商空間はカスプを持つヒルベルトモジュラー多様体になる。これらのヒルベルトモジュラー多様体に対するセルバーグ型ゼータ関数について研究を行った。高階数の群に対するセルバーグ型ゼータ関数についての定義は、現在まであまりよくわかっていなかった。 今回はГの(1, n-1)型双曲-楕円共役類に対して、ある種のセルバーグ型ゼータ関数を定義した。n=1のときはモジュラー群に対するセルバーグゼータ関数と一致し、解析的性質はよく知られている。n=2のときは、昨年度までに研究を行ったヒルベルトモジュラー曲面に対するセルバーグ型ゼータ関数に一致する。跡公式の幾何学的辺に現れる総双曲な共役類に対する軌道積分が試験関数のKタイプに依存しないというセルバーグの原理に着目することにより、今回定義したヒルベルトモジュラー多様体に対するセルバーグ型ゼータ関数もKタイブが異なるいくつかの(Kタイプが自明でない場合に拡張した)エフラットの跡公式をいくつか組み合わせることによって複素平面全体への有理型解析接続が示せることが分かった。重さの異なるエフラットの跡公式を組み合わせて、跡公式の“差分"が得られるが、そのスペクトル辺には主系列表現と特定の離散系列のテンソル積になっているような表現の系列が現れる。このようにして得られる跡公式の“差分"は元々の跡公式のある種の細分化になっており、そういった点でも大変興味深いといえる。
|
Research Products
(1 results)