2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540039
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
権 寧魯 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (30302508)
|
Keywords | ディリクレ級数 / 跡公式 / 総双曲 / 対相関 / レギュレーター |
Research Abstract |
今年度は、階数1のリー群二つの直積の離散部分群Γの総双曲共役類から構成されるセルバーグ型ディリクレ級数とその解析的性質から導かれる漸近公式について研究を行った。離散部分群Γの楕円-双曲共役類から定義されるセルバーグ型ゼータ関数の解析的性質を調べる際に重要だったのは、重さの異なるセルバーグ跡公式の差分から得られる"跡公式の細分化"であった。しかし、跡公式の差分を考えている限りは、セルバーグ原理により総双曲共役類の寄与がすべて消えてしまうので、差分型でないような跡公式の細分化を考察する必要がある。つまり、もともとの跡公式から十分たくさんの総双曲共役類の寄与が消えていて、かつ十分たくさん残っているような"切断された跡公式"を考察する必要があった。ガンゴリが階数1の局所対称空間に対してセルバーグゼータ関数を定義するのに用いた試験関数を少し修正した重み関数を用いて、離散群の総双曲共役類上の関数をその各成分の対相関関数として定義し、それをフーリエ変換した試験関数を考察した。このようにして得られた試験関数はよい性質を持ち跡公式に適用可能で、十分たくさんの総双曲共役類上で消えていることがわかった。得られた"切断された跡公式"を用いて、特に幾何学的辺の総双曲共役類からある種のセルバーグ型のディリクレ級数が定義できることがわかり、その解析的性質を調べることが出来た。このセルバーグ型のディリクレ級数はある右半平面で絶対収束し、それを含むある右半平面まで有理型に解析接続されることが示された。特に、いくつかの極の留数がその位置によらず、重み関数の定積分だけで決まることがわかった。これから、各総双曲共役類の中心化群の生成元たちから決まるレギュレーターの制限された漸近和が求まり、解析数論的にも大変興味深いと言える。
|
Research Products
(2 results)