Research Abstract |
基礎体の標数が正である代数幾何学においては,標数零の場合では起こり得ない様々な現象が観察されている.特に射影多様体Xの埋込接空間の振舞に関する正標数特有の現象の多くはXのガウス写像の分離性,および,(射影双対性に関する)reflexivityによりコントロールされることが知られている.したがって,ガウス写像の分離性とreflexivityの関係を明らかにすることが自然と問題になる.本研究代表者の従来の研究,深澤知氏(学術振興会特別研究員)の研究,そして,深澤氏との共同研究により解ってきたことは,射影多様体のセグレ積(つまり,直積のセグレ埋込による像)により,上記問題に関して興味深い様々な例が構成できることである.ここでいう"興味深い例"とは,ガウス写像が分離的にもかかわらずreflexiveではない射影多様体のことであり,1990年初頭証明されたS.Kleiman-R.Pieneの定理「reflexiveならばガウス写像が分離的となる」の逆が成り立たない事を示すものである.そのような経緯から2007年度は,深澤氏と共に,射影多様体のセグレ積のreflexivityについて調べることにした.その結果,射影空間P^-mと射影多様体Yのセグレ積Xに対して,Xがreflexiveとなるための必要十分条件をm,dim Y,そして,Yの一般ヘッセ行列の階数で記述することに成功した.これにより従来,散発的に構成されていた様々な例のreflexivity(またはnon-reflexivity)を統一的かつ理論的に説明することが可能となった.またこれは,本研究代表者の,2つ以上の射影空間のセグレ積のreflexivityに関する結果の一般化を与えている.
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