Research Abstract |
研究代表者らは,空間の第一近似は巾零リー環であるという見地にたち,巾零幾何・巾零解析を展開してきたが,最近,巾零幾何・巾零解析の枠組みを基礎にして,リー環の表現,微分方程式,旗多様体の部分多様体の外在幾何,これら三者の緊密な関係を浮き彫りにした. 特に,階数付きリー環gの階数付きベクトル空間Vへの表現に対して,それに付随する微分方程式系のクラスD(g,V)が定まること,さらにD(g,V)の中で線形かつ可積分なもの全体ILD(g,V)も定まること,また一方その表現に付随して旗多様体へ埋め込みのクラスS(g,D)が定まること,そしてILD(g,V)の同値問題とS(g,D)の外在的幾何が同型となることを明らかにした.またgが単純なときには,動標構の方法と代数的調和積分論を用いて,ILD(g,V)の同値問題にたいする一般的な解法理論を立てた. 本年度の研究では,Boris Doubrov,待田芳徳と共同で前述の理論の一層の展開と整備を進め共著論文の第一稿をまとめた.現在最終稿に向けてさらに推敲中である. また,この理論により,gが単純なときR∈ILD(g,V)の不変量は,(g,V)から付随して決まるあるコホモロジー群H^1(g,V)に値を持つが,リー環論を援用しこのコホモロジー群が自明になる場合を決定し,これを旗多様体の部分多様体論へ応用し,旗多様体の部分多様体に関する一連の剛性定理を得た. さらにこの理論の様々な具体例への応用を進め,特にsl(3)の随伴表現に付随する微分方程式系と対応する7次元射影空間の中の3次元部分多様体について詳しい研究を進めた.Mapleの微分幾何パッケージの製作者Ian Andersonを京都に招聘しその協力を得て,具体的な計算をMapleを用いて遂行し,同型群が推移的な場合にこのクラスの微分方程式系の分類を行った.
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