2007 Fiscal Year Annual Research Report
構造化個体群動態学の数学的理論とその感染症数理モデルへの応用に関する研究
Project/Area Number |
19540116
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 寿 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 准教授 (80282531)
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Keywords | 感染症 / 人口 / 数理モデル / 微分方程式 / 基本再生産数 / タイプ別再生産数 / 閾値条件 / 安定人口 |
Research Abstract |
[1]ユトレヒト大学の西浦博博士との協力のもとで、タイプ別再生産数概念の動学的定式化とその未発症感染モデルへの応用をおこなった。タイプ別再生産数は感染症のホスト集団が異質の人口(個体群)からなる場合に、特定種類の感染人口において1次感染者が再生産する2次感染者の平均数であるが、これは特定集団へのワクチン接種や隔離によって感染症が征圧できるかどうかの閾値条件を計算するために不可欠の概念である。本研究では、タイプ別再生産数を導く動学モデルを定式化して、初期成長率や世代時間との関係やそれらの計算方法を明らかにした。またこの基本モデルの応用として、未発症感染モデルによって発症感染者隔離政策の有効性を検討した。インフルエンザや天然痘などのように、発症段階以前にすでの感染性を獲得している感染症は多い。そこで、感染者を発症と未発症にわけて、発症者のタイプ別再生産数や世代時間を計算する公式を導き、発症者隔離による流行根絶の閾値条件を導いた。従来の感染モデルは必ずしも観測にかからない感染者のカテゴリに依存していることが、実用的利用を妨げてきていたが、本研究のモデルでは、観測データから基本的な疫学パラメータが得られることが重要である。 [2]ユトレヒト大学の西浦博博士との協力のもとで、安定人口成長下におけるエンデミックな感染症における基本再生産数の推定のための理論的なフレームを構築して、単純な生残率の仮定のもとでの基本再生産数の推定をおこなった。これは従来に定常状態下における推定手法を改良して数学的に厳密に展開したものであり、人口成長と感染症流行の関係を明らかにするための重要なステップである。
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