2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540137
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内田 雅之 Osaka University, 基礎工学研究科, 准教授 (70280526)
|
Keywords | 拡散過程 / 高頻度データ / 統計的モデリング / パラメータ推定 / 情報量規準 |
Research Abstract |
エルゴード的拡散過程から得られた離散観測データを用いてモデル選択のための情報量規準の構成を行った.統計モデルが真のモデルを含んでいる場合,赤池情報量規準(AIC)は最大対数尤度(尤度関数に最尤推定量を代入したもの)とパラメータ空間の次元によって定義される.しかし,離散観測データに基づいた拡散過程の尤度関数(確率密度関数)は一般には厳密に導出できないため,拡散過程におけるAICの構成及びその正当化は容易ではない.本研究では局所正規近似(オイラー・丸山近似)によって導出される疑似尤度関数とその疑似最尤推定量の漸近有効性に着目し,最大疑似対数尤度とパラメータ空間の次元を用いて,赤池型情報量規準の構成を行った.既存のAICは正則条件の下で,平均対数尤度の漸近不偏推定量となるが,本研究では2つの統計モデルにおける赤池型情報量規準の差が平均対数尤度の差に対する漸近不偏推定量になることを証明した.特に,対数尤度関数のパラメータに関する3次までの導関数の一様モーメントの存在についてはマリアバン解析を用いて証明した.さらに,計算機実験において,提案した赤池型情報量規準がエルゴード的拡散過程の変数選択及びモデル選択に機能的であることを確認した.統計モデルが真のモデルを含んでいるという制約はあるものの,提案した情報量規準は最大疑似対数尤度とパラメータ空間の次元だけで構成できるので,計算しやすく実用的である.また,ファイナンスの分野等において高頻度データを用いたエルゴード的拡散過程の変数選択及びモデル選択問題に応用することができ,高度かつ柔軟な統計的モデリングが期待できる.
|