2008 Fiscal Year Annual Research Report
確率過程論を用いた非完備市場における価格付け理論の研究
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19540144
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新井 拓児 Keio University, 経済学部, 准教授 (20349830)
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Keywords | 数理ファイナンス / 価格付け理論 / 非完備市場 / リスク測度 / 効用関数 / 同値martingale測度 / Orlicz space / semimartingale |
Research Abstract |
平成20年度は2つの研究を同時に行った.一つは,平成19年度に始めた共同研究である.共同研究者は,スイス連邦工科大学チューリッヒ校のSchweizer教授とカナダ・アルバータ大学のChoulli准教授である.この研究は,Orlicz空間上での最適ヘッジ問題とそれに関連するマルチンゲール不等式に関するものである.最適ヘッジ問題に関しては,最適解が一意存在するための十分条件を得ることに成功した.しかし,マルチンゲール不等式に関する研究は平成21年度に持ち越すこととなった.もう一つの研究テーマは,Orlicz空間上の凸リスク測度に関する研究である.これも昨年度からの引き続きである.19年度末に論文「Good deal bounds induced by shortfall risk」をまとめたが,20年度はこの成果の拡張を行った.19年度の論文では,条件付請求権の売り手がうまく戦略を組んでショートフォールリスクをある閾値以下にできる最低価格を,Orlicz heart上の凸リスク測度で表現することに成功した.これに対し,投資家の選好を表す損失関数や投資家が選択できる戦略のクラスを拡張するためには,この最低価格をOrlicz空間上の凸リスク測度で表現することが必要となる.そのための必要条件と表現定理の導出に成功し,論文を改訂することに成功した.この成果を得ることができたきっかけは,平成20年7月にロンドンで開催された国際学会に科研費を使用して参加したことによる.その学会において,私は19年度末に得られた成果を発表した.それに対して,凸リスク測度の研究で最近大きな成果を得ているイタリア人研究者であるミラノ大学のFrittelli教授から色々とアドバイスを頂き,今回の拡張を行うことを提案してもらったのである.
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