2009 Fiscal Year Annual Research Report
確率過程論を用いた非完備市場における価格付け理論の研究
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19540144
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新井 拓児 Keio University, 経済学部, 准教授 (20349830)
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Keywords | 数理ファイナンス / 価格付け理論 / 非完備市場 / リスク測度 / 効用関数 / 同値martingale測度 / Orlicz space / semimartingale |
Research Abstract |
平成21年度は,19年度から始めたGood deal boundsの研究に現れるショートフォールリスク測度に関する研究の総仕上げを行った.ショートフォールリスク測度とは,条件付請求権の売り手がうまく戦略を組んでショートフォールリスクをある閾値以下にできる最低価格を表す凸リスク測度である.このショートフォールリスク測度により,条件付請求権の価格の候補を求めることができる. 21年度の前半では,20年度までに得られた結果を,原資産価格過程が非局所有界である場合に拡張すると共に,admissible戦略が凸錘や凸に制約された場合についても論じることに成功した.この結果を,19年度末に書いた論文「Good deal bounds induced by shortfall risk」の改訂版に書き加え学術論文雑誌に投稿した. さらに後半では,Orlicz空間上の凸リスク測度の一般論の研究,特にinf-convolutionに関する研究を行った.Inf-convolutionは,最適リスク分配問題などに登場するリスク測度の分解方法であり,これまでは有界確率変数上のリスク測度に対する研究しか行われてこなかった.今回はそれを一般のOrlicz空間上のリスク測度にまで拡張した.これをショートフォールリスク測度の表現の導出へ応用した.これまでに得られていたショートフォールリスク測度の表現は,Orlicz空間のうちOrlicz heartと呼ばれるものを対象としてきたが,これを完全に一般のOrlicz空間に拡張することに成功した.一般のOrlicz空間は順序連続性を持たないため,リスク測度の表現を得るためには順序下半連続性を論じる必要がある.そこでinf-convolutionを用いてショートフォールリスク測度を2つのリスク測度に分解し,それぞれの下半連続性を調べた.この結果を論文「Convex risk measures on Orlicz spaces : inf-convolution and shortfall」にまとめ,学術論文雑誌に投稿した.
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